射出成形に求められるコストと品質への対応
射出成形における品質とコストは国際競争の観点から日々厳しい対応を迫られています。そもそも、品質とコストはトレードオフの関係に有りますが、毎年のように要請されるコストダウンに対し、知恵を絞った新たな価値の創出や無駄取り等を通じ、対応されているのが現実かと思います。この様な品質向上やコストダウン対応への考え方として、VA価値分析とVE価値工学があります。
VA提案とは
VA(Value Analysis)は価値分析と呼ばれ、既存の製品の品質を維持したままコストダウンを行う提案です。原材料の調達方法の変更や、作業の効率化を通じコストダウンを実現させる方法となります。
VE提案とは
VE(Value Engineering)は価値工学と呼ばれ、主に新製品の設計段階から品質や機能とコストの関係を検討する手法として用いられます。同じコストで機能を高める、同じ機能でコストを下げる、コストを上げそれ以上の機能を高める方法があります。
ご相談・お問い合わせ
ハーモの周辺機器は射出成形の自動化・省人化、品質向上、コスト低減、生産性の向上、樹脂のリサイクルなど幅広いテーマで貢献します。成形現場でのお困りごとをご相談ください。
射出成形におけるVA・VE提案の着眼点
射出成形におけるVA・VEの着眼点としては、「原材料調達」「製品機能品質」「工程改善」などが挙げられます。
原材料調達の観点
樹脂や金型において同じ品質の代替材料の検討、現在使用する材料のリサイクルの検討、材料調達ロットやリードタイム等の着眼点が考えられそうです。
製品機能品質の観点
複合成形や一体成形による部品点数削減の検討、新たな成形技術導入の検討、新たな素材採用の検討、等の着眼点が考えられそうです。
工程改善の観点
金型の製品取り数の変更や成形サイクルアップ、段取り作業の改善、自動化の推進、等の着眼点が考えられそうです。
事例:A社様
樹脂リサイクル率アップによるVA提案
ワールドワイドに射出成形機を2000台以上保有されているA社様では、同じ樹脂を年間数千トン消費されており、樹脂調達コストの削減に取り組まれていました。
中でも、樹脂のリサイクル率向上は大きなコストダウン効果をもたらす一方、製品品質の維持にも課題を抱えておられ、粒断機のテストを繰り返し、同じ機能でコストを落とす社内VA提案を実現されました。
品質を維持したままコストダウン
A社様ではリサイクル材の粒のバラツキ程度や粉が射出時の流動性や圧力にどのような影響が出るのかを数社の粉砕機でテストされました。その結果、ハーモの『粒断機』による粒が一番品質的にも安定し、リサイクル率も高める結果を得られました。A社様はではハーモの粒断機を導入され、品質を維持したままコストダウンを実現されました。
ハーモの『粒断機』
ハーモの『粒断機』は従来の粉砕機とは全く異なります。射出成形における粉が発生する原因がなく、熱や静電気の発生も最小限にとどめることを可能にしました。
事例:B社様
成形後組立てからインサート成形によるVE提案
乗用車牽引に使われるフックはバンパーの内側のシャーシに取り付けられています。このフックは常時使用しないことから外観上隠すために、別の樹脂部品をバンパーへ組み込んでいます。
この樹脂部品は脱着部品であることから密着性能を要求されます。そのため、2種類の樹脂で一部品を構成しており、これまでは成形後に組み立て、完成品にしていました。
課題:寸法誤差、組み立ての生産性向上
このため、製品は厳しい寸法公差を求められ、成形品の寸法誤差と共に、組立ての寸法誤差による品質課題と、組立ての生産性向上に課題を抱えておられました。
この2種の成形品をサーボ駆動取出ロボットを活用しインサート成形することで、製品寸法誤差と組立寸法誤差の解消と組立ての自動化を図り、VE提案を実現されました。
サーボロボットを活用し、インサート成形
- サーボ駆動取出ロボットを活用
- 一次成形した樹脂部品を仮置き
- 二次成形の金型キャビティーピッチに修正
- 二次成形用金型へ自動インサート
一体成形による寸法精度向上並びに、サイクルアップによるコストダウンを実現されました。
ハーモの『サーボ駆動取出ロボット』
射出成形の周辺機器の総合メーカーであるハーモだからこそ、お客様ニーズや課題に合わせた自動取り出しロボットを多数取り揃えています。ぜひ生産性に向上にお役立てください。
事例:C社様
成形品の色調検査の自動化によるVA提案
車の内装部品は高級車種になると多様な色が採用され、色むら、色調変化は人の肉眼でも見落とされるほど微妙な色合いとなっています。
月に数万個の部品を数色識別作業されているC社様では、微妙な色調変化の選別ができず、しばしば不良品を流出してしまうと言った課題を抱えてられました。また生産数量が多いため、複数の人手が掛かり、なかなか検査要員を確保できない課題も抱えておられました。
これをカメラ監視による自動選別工程を導入するVAを取引先に提案され、人の検査ミスによる不良品流出防止と、検査工程の時間短縮と自動化を実現しました。
事例:D社様
成形不良品選別の自動化によるVA提案
射出成形現場においては作業効率の観点から、作業者一人が受け持つ射出成形機の台数は増加傾向にあります。一人で8台~10台の射出成形機を受け持つケースを良くお聞きします。
成形現場では「成形前段取り」「成形量産」「成形終了後段取り」など、多くの作業工程があり、特に成形前と成形後の段取りに多くの負荷がかかります。
よって、成形量産中の品質確認までなかなか手が回らず、別工程で品質検査を行うお客様を多く見かけます。
監視が難しい周辺機器の異常による不良品流出
車の外観製品を成形されるD社様では、成形工程での不良品流出の課題ををかかえておられました。「乾燥機の乾燥能力低下に気付かずに不良を出してしまった」「落雷による瞬間停電で金型温度調節機が停止したことに気付かず量産を継続し、不良品を出してしまった」など、特に人では監視が難しい周辺機器の異常による不良品流出のケースにご苦労されていました。
トータルリンクシステムで不良品流出防止
D社様では新たな設備導入に際しトータルリンクシステムを採用し、下記工程を実現しました。
- 周辺機器の稼働状況をロボットコントローラが常時監視
- 周辺機器の異常を認識
- ロボットが自動で不良品と思われる製品を自動選別
成形工程における品質異常の自動検出とトレーサビリティーの実現と不良品流出防止のVA提案を実現されました。
ハーモの『トータルリンク』
トータルリンクとは
射出成形周辺機器の設定・起動・モニタ一括管理で生産ラインを総合管理
射出成形工程では射出成形の「事前」「事後」に様々な周辺機器が存在します。
- 樹脂乾燥機
- 金型温調機
- 樹脂混合機
- 成形品取り出しロボット
- 自動ストッカー
それら周辺機器と繋がり、「設定」「起動」「モニター」を一括で管理して、射出成形ラインの生産性を向上するシステム。それが『トータルリンク』です。