射出成形におけるゲートカットの自動化と改善事例

射出成形におけるゲートカットの自動化と改善事例

背景

射出成形の現場において、ゲートカット作業は、製品の品質だけでなく、コストや作業効率を左右する極めて重要な工程です。多くの現場で、ゲートカット作業に伴うコスト増や品質のエラーなど、さまざまな課題に直面しています。

河口尚久|ハーモ本記事ではゲートカットにおける代表的な課題とその解決策を分かりやすく解説します。ゲートの種類やカットに使用するニッパ、自動化技術の導入事例などを具体的にご紹介します。ゲートカットにお悩みの方が問題解決の糸口を見つけられるきっかけになれば幸いです。
(執筆者:営業推進部 河口尚久)

 

ゲートカットにおける課題

ゲートカットでは、以下のような課題が頻繁に見られます。これらの課題が解消されないままだと、競争力の低下や製品不良の増加にもつながりかねません。

  • コスト増
    手作業によるゲートカットは作業者が長時間を要するため、人件費が増大します
  • 品質エラー
    作業者の疲労や集中力低下により、カットの精度が落ちやすく、製品品質にばらつきが生じます
  • 納期遅延
    自動化設備が整っていない場合、手作業に依存することで生産数が追いつかず、納期が遅れるリスクがあります
  • 作業者の負担
    ゲートカット作業は細かい作業が続くため、腱鞘炎など身体への負担が大きくなります
  • 自動化の難しさ
    ゲート位置のずれや複雑な製品形状などにより、ロボットを活用した自動化が簡単ではない場合があります
  • 設定の煩雑さ
    自動化されたゲートカット設備では、工具を使っての位置調整や細かい位置調整が必要で、多くの時間や労力がかかる傾向があります

これらの課題を解消するにはゲートカットに関する正しい知識を深めた上で、自社の製品や生産体制に合った方法を選択することが大切です。

課題解決のための知識と方法

課題を解決するためにはゲートの種類やニッパなどの切断工具の特徴、そして自動化技術に関する知識が必要です。ここでは代表的なゲートとニッパの種類、それらのメリット・デメリット、自動化のアプローチなどを整理して解説します。

代表的なゲートの種類と特徴

ゲートにはさまざまなタイプがあります。

サイドゲート

最も一般的なゲートで金型形状が簡単かつコストを抑えやすい一方、ゲートカット処理が必要となります。

サブマリンゲート(トンネルゲート)

成形品とゲートを自動で切断できるため手間がかかりませんが、多数個取りには不向きです。

ピンゲート

多点ゲートが可能で多数個取りにも対応しやすい反面、アクリルなど流動性の悪い樹脂には不向きでコストも高くなる傾向があります。

ダイレクトゲート

金型構造が単純で済む一方、基本的に1個取りの円筒形などに限定されます。

ニッパの種類と特徴

ゲートカットに用いるニッパも多種多様で、それぞれの長所を理解した上で製品形状やゲート位置に合わせて選ぶことが重要です。

クランク刃ニッパ

狭いスペースでのゲートカットを可能にし、入り組んだ形状にも対応しやすいのが特徴です。

二枚刃ニッパ

ジャンプゲートや段付きゲートのカットに適しています。

横向き刃ニッパ(ツールバー)

狭所へのアプローチや横方向からのカットがしやすく、省スペース化に寄与します。

スライドニッパ

スプールの根元をほぼ面一(つらいち)状態で切断できるため、後工程の仕上げが軽減されます。

ヒートニッパ

ゲート部分を加熱して柔らかくしながら切断するため、切断面がきれいになり、レンズなど透明製品のクラック予防にも役立ちます。

ゲートカットの自動化

手作業によるゲートカットには、コストや品質、作業安全など多くの課題が付きまといます。そこで近年注目されているのが自動化技術の導入です。

待機ニッパ

部品を保持したロボットアームが固定されたニッパにゲート部分を持っていき、自動的に切断する方法です。

  • 課題
    ゲート位置が微妙にずれる場合や、工具交換・調整の段取りに時間がかかる。
  • 対策
    ワンタッチ式の待機ニッパやニッパジャスターツールを活用して、段取り作業を効率化することが可能です。

ゲートカットテーブル

製品をテーブルに固定し、ニッパを移動させてカットする方式です。位置の安定性が高く、作業者の負担軽減にもつながります。

姿勢制御サーボ

ゲート位置が斜めになっている場合でもサーボモータの制御により、多軸方向のアプローチができるため、正確かつ安定したカットが可能です。

その他の最新ゲートカット技術

自動化のさらなる追求や特殊素材への対応を目的に新たな技術が次々と開発されています。

超音波ゲートカット

高周波振動を利用してゲートを切断するため、より精密で製品へのダメージが少ないカットが実現します。

レーザーゲートカット

レーザー光でゲートを切断し、高速かつ高精度。さらにバリをほとんど発生させずにカットが可能です。

チャック板内ゲートカット

チャック板にニッパを設置し、成形サイクル中に自動でゲートカットを行う方法です。取り出しと切断の同時進行が可能になり、生産性が一段と向上します。

導入事例

実際にゲートカットの自動化や効率化に取り組んだ事例を紹介します。自社の課題と照らし合わせながら、導入のヒントを見つけてください。

遊戯製品部品のゲートカット自動化

人件費を年間864万円削減 & 作業者の負担を軽減


課題

作業者が常に手作業によるゲートカットを行っていたため、疲労が大きく、アクリル素材特有の割れが起こりやすかった。製品歩留まりが悪化し、コスト増にもつながっていた。

解決策

姿勢制御サーボ付きロボットアームを導入し、ゲートカットを自動化。アクリルの割れを防止するヒートニッパも採用。

結果

人件費を年間864万円削減することに成功し、作業者の負担を軽減。品質面でも安定した生産を実現。

カップホルダーのゲートカット自動化

年間96万円の人件費削減 & 品質不良の大幅減少


課題

製品の素材がアクリルであるため、手作業でのカット時に割れが頻発。納期遅延や製品不良を繰り返していた。

解決策

ヒートニッパと姿勢制御サーボを組み合わせた自動化システムを導入。素材の特性に合わせ、最適な温度でゲートをカット。

結果

年間96万円の人件費削減に加え、品質不良の大幅減少を達成。納期遅延リスクも軽減できた。

高級櫛(くし)のゲートカット効率化

24時間稼働が可能に & 小ロットでも柔軟に対応


課題

多品種少量生産への対応が課題となり、従来の手作業カットでは追いつかず、生産性が頭打ちとなっていた。

解決策

待機ニッパによるラフカット後にストッカーへ自動で搬送し、溜めておける体制を整備。必要に応じて後工程で仕上げを行えるようにした。

結果

24時間稼働が可能となり、生産ロットが小規模でも柔軟に対応できるようになった。小ロット・多品種生産の効率化に大きく貢献。

課題解決に向けて

射出成形におけるゲートカットの課題はゲート形状の特性やニッパの選択、そして自動化技術の導入次第で大きく改善できます。本記事でご紹介した情報を参考に、自社の生産体制や製品仕様に即した最適な方法をご検討ください。

特に「作業負担の軽減」と「品質の安定化」は一石二鳥の効果が得られるため、作業工賃と設備導入の費用比較を意識しながら検討を進めることをおすすします。

もし具体的なお悩みやご質問があれば、エンジニアによるアドバイスを受けたり、他社の事例を参照することで、よりスムーズに解決策を見いだせると思いますので、お気軽に弊社エンジニアにご相談ください。

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